優雅なMGTD
自動車部で苦楽を共にした多くの方々と同様に、4年間の部活動で沢山の財産を頂いて実社会に出て行った。
その後の人生の中で、自動車部で得たものが、仕事、人間関係、そして趣味などにどれほど役に立ったか計り知れない。本稿では
テーマを車との関わりに絞って述べてみたい。
[1968-koba-03a/s] 【ソースデータ】
私は会社に就職した直後より、その時々の身の丈に合った車を買い求め、自動車の性能、品質が10年単位くらいで
大きく変化していくのを実感してきた。これらの車の中で最も印象に残っているのは、米国のデトロイト駐在時代に購入した、
1953年製MGTDである。
2004年に購入し、2006年に帰任するまでの2年間、車の整備、ドライブ、および現地のMGクラブの活動を楽しんだ。
アメリカでは何れの州でもクラッシックカーを保護する制度があり、例えば、一般の車に比べて、自動車の税金も保険も約30%の費用で
済むように、大変優遇されている。加えて、自宅の車庫のスペースも大きいので、クラッシックカーを愛好する人口が実に多い。
昔の名車を保有する人たちが、それぞれの車のモデルごとにカークラブを設立し、ピクニックや展示会を含むソーシャル活動を
楽しむのである。私が所属したMGクラブでは、MGカーだけを約80台保有し、このため倉庫のような車庫を3棟建てたメンバーもいた。
私のMGTDは、写真に示すように大変優雅な外観で、約50年間二人のオーナーが大事に維持し、クラッシックカーのショーで
表彰を受けたこともある車である。ただ、床は木製で、フレームも一部は樫の木が使われ、1953年製であることを感じさせるが、
スターターも装備され、エンジン音も実に軽やかな良い音であった。カリフォルニア州にはクラッシックカー専門の部品販売会社があり、
今でも純正、非純正の部品が調達可能で、学生時代に自動車部の車庫で学んだ経験を活かして整備を行い、車はいつでも運転できる状態を保った。
特に、週末に車の下にもぐり、何の干渉もなく外界から離れて過ごす時間は、本当に至福の時であった。残念ながら、帰任時にこのMGTDを
手放したが、毎日自宅の居間に掲げたMGTDの写真を見ては懐かしんでいる。写真に写っている友人の子供たちが、今では大学生となり、
来年の夏、私たち夫婦を訪ねてくれることを楽しみにしている。
[ 木庭さん(s43) (2011.11)記/流星23号(p.17)(2011.12/20発行) ]